常に懸念し続けたことが現実になってしまいました。製造業の成長を支えてきたのは、恐らく団塊の世代だったのでしょう。今ほど便利ではなかったものの、機械はよく考えられ、工夫され、新しいものが世に生み出されてきました。
時は流れ、リーマンショックが起きると、企業は若い力と道具の変化に対する適応力を重要視し、ベテラン社員のリストラに踏み切ります。これにより技術という製造業の土台を失ってしまったことに、まだ気付いていませんでした。
我が社も同様にベテラン社員と、難易度の高い小規模案件に苦しんでいた社員を切り捨ててしまいました。逆に大型案件を、楽してこなしている社員を評価し残してしまったのです。つまり、技術力を失ったのです。入社10年近くの私は会社が倒産しない対策としては決断に賛成していましたが、自分と苦しみを共にしていた社員の多くがリストラされたことと、難しい業務を行っていない社員が残ったことに大きな懸念を抱いていましたし、会社の将来を不安視していました。
人員整理が終わり、新しい組織で業務が再開され、不安はすぐに的中します。残った社員と直接関わり初めて、まず目についたのは、仕事の考え方の違いです。外注頼みで、難易度の低い業務ばかり行ってきた人たちにとって、サンプルがない難易度の高い仕事や問題を解決する発想力、お客さんとの交渉力、納期を守る意識、自分にベクトルを向けること、何もできなかったのです。
やがて、仕事は偏りを見せ始め、属人化。能力は大きく開き始めるが、仕事ができない人ほど残業が増え、収入が増える、利益が減る悪循環が起こりました。更には能力が下がってきた状態を改善できず、管理職は保険をかけ始めます。その結果、あるべきキャパに対する業務量より少ない仕事で予定が埋め尽くされているような嘘がまかり通るようになっていきます。
面倒な改善も行われず、道具は進化するものの、相対的に人間の能力は下がるばかり。見かけ上は相殺され現状維持されているように見える錯覚は20年近く続きました。
それでも、昭和の遺産とでも言いましょうか、何とかコピペと編集、何となく真似る。組み合わせる。そんなことをしながら誤魔化してきました。
最近、完全に限界を迎えてしまった気がします。図面を読めない。図面が描けない。ものを知らない。根気がない。調べることができない。正しく認識できない。話を聞けない。話せない。役割を全うできない。すぐに逃げる。人に迷惑を掛けても関係ない。当然頑張れないし、頭の回転も遅い。理解していないから他人に教えられない。聞いても教えてくれないから聞かない。聞かれたら困るから聞かない。
これら事実ではありますが、現代において、それを理由に叱ったり無理をさせることはありません。自らも学ぶことはありませんが、時代は高速化していきます。もう誤魔化しが聞かないのです。
如何でしょうか?私は非常に危険を感じていますが、できない人の多くは、それを知られることや晒されることが嫌で、何とか誤魔化し続けたいと思っています。
能力が下がり、要求が高まれば、質が下がり、お客様に迷惑が掛かります。信用を失った先に会社の明るい未来はありません。これから先、この問題の真っ只中にいる私達は何としてでもこの状況を打開せねばなりません。あと数年でもこの状況が続くようであれば、会社から仕事が無くなり、多くの社員と関連企業の方々は路頭に迷うことになります。
パワフルに問題に立ち向かう必要性とは裏腹に、炎上を繰り返す業務に振り回され続ける現状に疲れ果ててしまった私の近未来は如何に…
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